人面犬の『秋田で始まり、秋田で終わる』

『週刊少年チャンピオン』で田中杜芝先生の短期集中連載の実現を!!

秋田書店で描くということ

もし自分が漫画家だったら・・・。

正確に言えば、漫画家になるだけの才能があったら・・・。

秋田書店に投稿、持ち込みしただろうか!?

今から書くことは賛否両論、さまざま意見があると思うし、これを読むことによって俺が考えていることの主旨とは違った理解をしてしまう人も出てくると思う。

普通に「少年漫画」を目指すならば、やはりジャンプやマガジン、サンデーを目指すのが当然だろうと思う。
世間的に認知されたメディアで定期的に作品を発表し、作品は単行本化され、人気が出ればキャラクターグッズ、アニメ化も夢ではない。
作品の成功はすなわち経済的成功をもたらす。

秋田書店ならどうだろうか。

秋田書店だからといって、連載までの道のりが平坦だとは思わない。
仮にチャンスが到来したとしよう。
自分の作品が連載できたとしても単行本になる保証はない。
単行本が出たところで、それが最終巻まで発行される保証もない。
本誌連載といっても、発行部数は公称50万部。
他の少年誌ほどの注目が集まるとは考えられない。

でも、現実はどうだろう。
秋田書店に、これだけ多くの才能が集まっている。
その最たる例が梅田阿比先生だと思う。
梅田先生ほどの驚異的な新人が、なぜ秋田書店を選択したのかは本人しか知る由はない。
けれど、梅田先生の作品は秋田書店に似合っているとも思う。

秋田書店の場合、講談社や集英社、小学館のように最初から付加要素が準備されて連載開始となるとはほとんどない。
有望な新人(新人は全員有望だと思うが)だから編集者がストーリーや展開を綿密に設定したり、最初から広告代理店の意思が入った商業的な作品、マーケティング要素の入った作品は秋田書店では、ありえない。

漫画はすべて漫画としてのみ存在している。

梅田先生だけではない。
米原先生や小沢先生なども大手資本の他誌で活躍できる実力の持ち主だ。

ここで指摘したいことは「秋田書店で描くということ」と「秋田書店との相性」という2つの視点だ。

「秋田書店で描くということ」は、自立した「個」が求められる。
漫画でしか評価されないし、漫画でしか勝負できない。
何か大きなバックボーンが漫画を支えることはない。
大手他誌と違って「読みたい作品のついでに読む」という可能性は低いし、また少年誌ながら少年は読まない。
漫画家は漫画を描き、ひたすら毎週木曜日の発売を待たなくてはならない。
それは極めて孤独な環境であり、不安な状況だと思う。
ただし、ここで自立した「個」が確立できれば、雑音のない世界で漫画に集中できる。

「秋田書店との相性」は、作家の持つ特性との化学的な反応だと思う。
例えば西条真二先生は講談社、小学館と渡り歩いた後、秋田書店に活動の場を「復活」させたが、今が一番漫画家として活き活きしている。
これは化学的、物理的な問題で、秋田書店の持つアンダーグラウンドな匂いが作品に「良風」となるか「悪風」になるかの違いだ。
もし、チャンピオンにワンピースやナルトが連載されていたら、その場違いな雰囲気に読者は窒息するだろう。
でも、王様のオーパーツやキャラメルリンゴが連載されていれば、逆に読者は安心してしまう。
「短期集中」でチャンピオンに登場した作家の中で、マツリセイシロウ先生やミッチェル田中先生は秋田書店に適性があった代表的な作家。
逆に、にくぼし先生はまったく適性がなかった。

こうして考えると、なぜチャンピオンに連載・・・というのは極めてナンセンスな疑問であることに気付く。

今、チャンピオンの目次ページを見て欲しい。
この連載作品の中で、「これジャンプだったらもっと小学生に人気出たよね」、「これマガジンならもっと女の子のファン増えたよね」という作品はあるだろうか?
奇妙なことだが、一つもない。

そう、すべてチャンピオン適性ばかりなのだ。

チャンピオンで描くということは、「個」で勝負するしかない過酷な環境を選択した猛者の集まりであり、チャンピオンというアンダーグランドな風でしか育たない天然植物のような希少性のことなのだと思う。

クローバーだって、この圧倒的につまらない、まったくストーリー性ゼロの状態こそが秋田書店適性なのだ。
もし、これがマガジンだったら、編集部主導でストーリーは進行、もしくは原作者つきで、漫画家は有名大学卒の20代編集者に、口頭で指示されながら、毎週作画のみしていただろう。
そのほうが、漫画家にとってもいいとは思う、経済的な意味でも。
でもチャンピオンというのは、なぜ!?と読者に思わせながらも、連載は続いてしまうのである。

チャンピオンに集まった作品は偶然ではなく、すべて必然なのだと実感する。

長文になりましたが、自立した「個」と、秋田書店のアンダーグラウンド適性、この2つに尽きると思います。

(以下付録)

古い話だが、かつて目次ページのコメント欄で「萌えを嫌う人は多いけれど、市場が萌えを選んだんですよ」と発言した男性作家がいた。
自分が、市場に「選ばれた」と大言壮語する感覚は、まったくチャンピオン適性を欠いている。
「市場」を気にして創作活動できたら、創作活動したいなら、秋田書店という表現の場を選ぶのはやめて欲しい。
この記事を書きながら、どうしても、この不快な発言が思い出されてしまった。
そして、この発言には「プロとしての品格」がまったくない。
当たり前のことだが、本当のプロ(表現者)ならば、こうした自惚れ発言はありえない。
この男性作家の描く漫画は、作品として破綻していると思うが、一部で売れているのも悲しい事実ではある。
でも、漫画読みとしては記憶にも記録にも残らない漫画であるのも事実。

※この記事は大手他社の作品作りを否定するものではありません。
  1. 2008/01/02(水) 14:16:13|
  2. 週刊少年チャンピオン
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