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Author:人面犬
1976年(昭和51年)生まれ 32才
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TOP > 週刊少年チャンピオン > 林雄一 『ケーぷり。』 今、改めて「再評価」したい漫画
林雄一 『ケーぷり。』 今、改めて「再評価」したい漫画 2008.11.16
その中で、ふと目に留まったのが、林雄一先生による5週連続連載(短期集中)作品、「ケーぷり。」である。
この「ケーぷり。」、昨年12月、俺が独断と偏見で決定した秋田書店『週刊少年チャンピオン』十大ニュースにおいて、「空気漫画賞」に選出した漫画である。
その「ケーぷり。」を約1年ぶりに、じっくりと読んでみた。
そして、俺自身の「見る目のなさ」を猛烈に後悔したのである。
(この漫画、面白いじゃん・・・)
ここでは改めて、林雄一先生による「ケーぷり。」(全5話)について考えてみたい。
主人公、霧沢アキラの元に父親(博士)から届いた謎の携帯電話、それは「人型携帯電話」であり、美少女(コトハ)がその体を使って携帯電話の役割を果たすという発明品であった。
この主人公、霧沢アキラ、中性的な魅力を持った美少年であるが、ユーモアセンスも持ち合わせた憎めないキャラクターである。
冒頭、父親から送られてきた携帯電話を、これまでの経験から「どうせろくでもないもの」と考えたアキラは、粗大ごみとして捨ててしまう。
その父親はアキラへの手紙の中で「僕たち(博士を含む携帯開発チーム)、夢に生きるピーターパン」と語っているのだが、

「・・・ったく・・・誰が夢に生きるピーターパンだ どう考えても親父は夢の国を荒らすフック船長だろーが」
こうしたセリフのやりとりが楽しい。
ところが捨てたはずの携帯電話であるが、アキラが帰宅すると、なぜか玄関に置かれている。
その携帯電話から飛び出してきた美少女がコトハである。

このコトハを巡って巻き起こるドタバタが、本作「ケーぷり。」の主なテーマである。
さて、ここでひとつ気になるのが、この後の急なお色気展開である。
アキラが、コトハのことを理解できず、戸惑っていると・・・

コトハは突然、服を脱ぎ捨て、両乳首を長髪で隠し、アソコを左手で隠し、全裸になってしまう。
「読者サービス」と呼べばいいのだろうか・・・、それにしても開始早々、あまり意味が感じられない全裸カットである。
これは推測でしかないのだが、俺はこのあたりに強烈な「編集者の意図、指示」を感じてしまう。
無論、全5話の読み切りスタイルなのだから、スローな展開はできない。
けれど、このタイミングで「裸」という演出、展開は、よくよく考えてみると、やはり唐突であると言わざるを得ない。
扉表紙には「ラブコメ」とあるので、納得はできるのだが、あまりにも「直球過ぎる」のが秋田「お色気」の基本であるように感じる。
第2話、スヤスヤと眠るコトハが起きるシーンがあるのだが、そういった自然な成り行きでの「裸」ならば、それは納得できるし、違和感はない。

林先生の描く裸は、垢抜けた印象が強く、すごく健康的なものであり、少年誌にピッタリだと思う。
コトハがアキラの気を引くために、コスプレを見せるのだが、その姿もかわいい。

さて、第3話から、これまた存在感たっぷりな女の子が登場する。
アキラのクラスメイトで、学級委員長の天野由衣である。

由衣はアキラに恋心を寄せており、かなりの「妄想好き」、いつもアキラとの仮想恋愛を「妄想」し、悦に入っているキャラクターである。
この由衣が、とにかく楽しい、面白いキャラクターである。
それは「真面目」と「不真面目」が、丁度良くミックスされた(?)女の子だからである。
真面目だけど不真面目、不真面目だけど真面目・・・そんな由衣のキャラクターが、このお色気ギャグ漫画の世界を大きく盛り上げることになる。
その由衣は、憧れのアキラを「宮沢賢治の詩の朗読会」に誘う。

普段は、妄想全開でアキラのことを考えている由衣だが、ここではしっかり「正攻法」でアキラを誘っているあたりが、すごく健気で愛らしい。
ところが、その「詩の朗読会」の予約を取ろうと自分の携帯を取り出すと・・・、「割り込み機能」が働き、由衣の携帯から、コトハが「犬神家の一族」の佐清のように出てきてしまう。

このあたりのスピード感、意外性がギャグ漫画として真っ当に面白い。
由衣が憧れのアキラを緊張しながら誘うシーンで、それをブチ壊すかのような破壊力を持ったコトハの登場(登場の仕方もスゴイ・・・)、これには大笑いしてしまった。
この後、アキラはコトハに激怒し、コトハを追い出そうとするのだが、誤ってコトハの上に乗ってしまう。

それを見てしまった由衣の反応が面白い。
ただ怒るだけではなく、いつものクセで「妄想」を爆発させてしまうのである。

しかし、そんな由衣も「妄想」が終わると豹変してしまう。
何故ならば、由衣の「妄想」とはイケメンのアキラ=白馬の王子様・・・といった「妄想」だったのである。
だからこそ、由衣は自分の「妄想」世界を汚したアキラに「怒る」のではなく、「失望」し、暴れてしまうのであった。

アキラ×コトハという基本の組み合わせを大事にしつつ、由衣という新しい強烈なキャラクターをここに関与させることで、ギャグ漫画として正しい昇華を成し遂げている。
第4話では、その由衣が一転して、「あれは何かの間違いですよね・・・霧沢くん・・・」とアンニュイな表情でシャワーを浴びているところから物語は始まる。

そして由衣は真実を探るべく、アキラの調査を開始するのであった。

ここで注目したいのが、由衣の後ろに描かれている母親の描写である。
こまかいカットではあるが、何ともユーモアにあふれたカットである。
コトハも負けていない「写メール機能」を使って、何と由衣そっくりに変身し、アキラに誘惑攻撃を始めてしまうのである。
このあたりの、ドタバタ展開が快感である。
読者の先をリードして、どんどん漫画が、どんどん物語が、読者をこれでもかと引き込むのである。

コトハは由衣に変身した後、アキラが由衣に先日の誤解を納得してもらうように、予行練習をやろうと持ち掛ける。(アキラがうまく由衣に説明できるように)
ところが悪乗りしたコトハは、由衣のキャラクターをまったく別の「女王様キャラ」に成り切って、アキラ
に攻撃してしまうのである。
いつもはいている黒のハイソックスを左足だけ脱いで、アキラの目の前に差し出し、「足をお舐め!!この汚物にまみれたナマイキな豚!!」と罵ってしまうのである。

アキラは驚いて、それを拒否するのだが、俺がアキラの立場だったならば、飼い主に忠実な犬のように、コトハのハイソックス脱ぎたてホヤホヤの左足にむしゃぶりついていただろう。(おいおい・・・)
コトハも負けていない。
今度は一転して、「乙女チック」なキャラクターになってしまう。

第5話、風邪でダウンしてしまったアキラを心配したコトハは、看護婦となってアキラを看病する。

ところが回復しない、寒気を感じたままのアキラにコトハは、自分の体を使って温めようと決意する。

ルナ先生っぽい展開に、思わずウットリである。
ラストシーン、アキラは由衣に無実を訴えるため(?)、自らチンチンを由衣に見せつける。

ここで、物語は完結する。
この全5話を、読み返してみて、改めて思う(反省する)ことがある。
この漫画の完成度は非常に高い!!
ギャグとして面白いのはもちろんなのだが、何よりもキャラクターが生き生きしている。
どのキャラクターも強烈な個性を持っているのだが、憎めない愛嬌も持ち合わせている。
主人公、アキラが非常に魅力的である。
女の子を大切にしたい・・・そんな優しさが感じるられるのだが、決して「優柔不断」ではない。
時には自分の意志を強く押し出し、難局を乗り切ろうとする強さがある。
コトハも、「うる星やつら」のラムのような存在であるが、ノリノリな小悪魔的キャラクターが最高に面白い、かわいい。
由衣の「真面目と不真面目」が同居した不思議なキャラクターは、この作品がギャグ漫画として成功することに貢献している。
思えば、この3人しか登場人物はいないのである。
(あとは、時たま登場したアキラの父親だけである)
今、改めて、ここに「再評価」したい。
林雄一先生の「ケーぷり。」という漫画作品は、昨年度チャンピオンで輝いたギャグ漫画の一つである。
宇都宮勇さんに、事前に今回のブログ記事の案を話してみたのだが、宇都宮さん曰く「ペンギン娘やゾクセイに対してボロクソに書いても平気でしたが、ケーぷり。だけはあのような記事にしたことを後悔している。見る目がなかった」と話していた。
俺も宇都宮さんも、完全に見落としていたのである。
林雄一先生の次回作、それが一日も早く『週刊少年チャンピオン』で実現できるように、ここに祈ります。
【 林雄一 「ケーぷり。」 本誌掲載データ 】
第1話(着信1) 新機種デビュー チャンピオン25号(2007年)掲載
第2話(着信2) お得な返品プラン チャンピオン26号(2007年)掲載
第3話(着信3) お細工ケータイ チャンピオン27号(2007年)掲載
第4話(着信4) 予想外写メール機能 チャンピオン28号(2007年)掲載
第5話(着信5) お客様看病主義でイこう チャンピオン29号(2007年)掲載
巻末作者コメント
25号 「色々なアレをこめて描きました。よろしくお願いします!」
26号 「日曜日はモモタロスとキュアアクアと一反木綿の日です。」
27号 「試しに一日中デスメタルを聴いてみました。凄く疲れました。」
28号 「友人の勤める会社の社長が演歌歌手デビューしてました。大丈夫か会社・・・。」
29号 「読んでくださった皆様、ありがとうございました。ではごきげんよう(ハート)」
第1話(新連載)カラー表紙

<本記事内における画像の出典>
秋田書店『週刊少年チャンピオン』2007年25号〜29号掲載 林雄一「ケーぷり。」より
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