人面犬の『秋田で始まり、秋田で終わる』

『週刊少年チャンピオン』で田中杜芝先生の短期集中連載の実現を!!

ヤングチャンピオン14号 新連載 『サクリファイス』 第1話 チーム・オッジ

『ヤングチャンピオン』14号から新連載となった『サクリファイス』、原作は近藤史恵先生、作画は菊地昭夫先生。

原作の『サクリファイス』は新潮社から発売され、第10回大藪春彦賞、第5回本屋大賞第2位をダブル受賞した青春ミステリの話題作。

作画の菊地昭夫先生は、第54回週刊少年チャンピオン新人まんが賞にて奨励賞を受賞して、ヤングチャンピオン誌上にて『将棋の子』(原作・大崎善生)、『アジア無頼』(原作・宮崎学)を連載してきた実績がある。

原作の新潮社から出ている小説は未読なのだが、これまた何とも次週が(次話が)楽しみな、大型作品の連載開始だと期待に胸が膨らんでいる。

インターネットで『サクリファイス』について、いくつか書評やレビューを読んでみたのだが、サイクリングという世界的な競技における熱く冷酷な、人間ドラマがこれほどまでに丁寧に書かれ、そのあたりを機軸としながら数多くの伏線が張り巡らされ、最後で解決(回収)するというミステリ要素があると知り、否が応にも期待は高まる。

第1話「チーム・オッジ」を読んで、まだ1話、31ページながら、この作品について「大きな見込みあり!」と、判断してしまった。

その理由の中に、いわゆる良質な青年漫画の発表の場が、秋田書店にないという現実がある。
今のヤングチャンピオンの全体的な誌面、方針についてNOと言うわけではないのだが、やはり、良質な青年漫画の発表の場があるかと言えば、疑問だ。

大手3社(講談社・小学館・集英社)は数多くのメディア媒体があり、青年漫画も少年漫画に負けないぐらいのボリュームがあるのだが、秋田書店の場合、『ヤングチャンピオン』にせよ、『プレイコミック』にせよ、少年誌以外の雑誌が、内容の面白さ以前の問題として、「元気がない」のが現状だろう。

秋田書店と同規模と思われる少年画報社の場合、そういった面では、良質な青年漫画の発表の場、機会は多く、『ヤングキング』、『ヤングキングアワーズ』などの雑誌において、実験的な試みを持つ青年漫画も数多く発表されている。

そんな前提を踏まえた上で、改めて『サクリファイス』を読んでみると、こういった漫画がヤングチャンピオンに登場してくれたことに感謝の気持ちがある。

内容について触れていきたい。

国内最大の自転車レース、「ツール・ド・ジャポン」が、目前に迫っていた。
チーム・オッジは主力(エース)の石尾豪を中心に練習の真っ最中であり、そこには助力(アシスト)の白石誓(ちか)も帯同していた。
絶対的なエースである石尾の存在を脅かす存在として、白石と同期加入の伊庭和美がおり、伊庭はすでにレースで2勝をあげている。

石尾は峠を得意とするクライマー、伊庭は平坦な道を得意とするクライマー。

まず、第1話だけあって、登場人物の顔見せがメインになっているが、驚くのが菊地昭夫先生の画力である。
「将棋の子」「アジア無頼」と両作品とも、単行本は持っていないが、リアルタイムで読んできた作品である。
そして、本作『サクリファイス』において、菊地先生の画力が、非常に高度な形で高まっていることに驚く。

この「非常に高度な形」というのは、リアリティがあって、精微なライン、無駄がなくスッキリした画面構成、スピード感、疾走感があって、情景豊かなカットがあり、何よりも登場人物がカッコイイということに尽きる。

あと指摘したいのが、キャラクターの目の力である。
スポーツマン、アスリートの覚悟、自信が目に表れている。
活き活きとしていながらも、どこか冷酷で、どこか冷淡な目、瞳。
それは勝負における残酷なまでの厳しさを含んでいるといえる。

スポーツ、特に自転車競技、サイクリングにおいては、これまで、俺自身、「個人競技」という認識があったのだが、どうやらそれは大きな誤解、無知であったようである。

エースを勝たせるためには、アシストが必要。
風からの防御をしたり、体を張ってエースの脇を守ることもある・・・、すべてはエースの勝利、つまりチームの勝利のために。
それこそがサクリファイス(犠牲)なのである。

もう一点、『週刊少年チャンピオン』連載の渡辺航先生連載の『弱虫ペダル』と比較しながら読むのも、この作品を楽しむ方法のひとつだろうと思う。

(おそらく渡辺先生もサクリファイスは読むと思う)

この「比較」というのは、良質な少年漫画と良質な青年漫画の違いを楽しむことである。
自転車競技をストーリーの柱としながら、アキバ少年の小野田坂道が自転車競技に「目覚める」のが弱虫ペダルならば、選ばれた選手たちが自転車競技という過酷な舞台でぶつかりあうのがサクリファイスだろうと思う。

どちらが、いい、悪い、ではない。
少年漫画は、やはり成長があり、恋愛があり、そしてトリッキーな漫画的仕掛けがあって当然である。
青年漫画は、人間同士のありのままのリアルな感情の描写があり、ストーリーの起承転結に論理的な納得が求められる。

だからこそ、「少年漫画の面白さ」と「青年漫画の面白さ」は違ってくるのだと思うが、その違いを楽しめるようになることこそが、「漫画を楽しむ」ということの大きな分岐点になると思う。

次号以降も目が離せないのだが、何よりこういった作品は、単行本でじっくり読むのが、最高なのだろうと思ったりもしている。
  1. 2008/06/28(土) 22:25:14|
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ヤングチャンピオン 田口雅之新連載 ブラックジョーク

原作(シナリオ)小池倫太郎×漫画(作画)田口雅之による新連載「ブラックジョーク」

第1話 スメル

ストーリー設定は、あまりにもエクストリーム。
近未来の日本。
それは独立した国家ではなくアメリカ51番目の州、ニホン州。
その首都(都市)、東京市では保守的政策を遂行する市長によって、風俗営業がすべて禁止されていた。
その代わり、東京湾岸地域に「きぼう島」という治外法権的な風俗産業の開放地区が作られ、カジノ、売春が合法化されていた。
通称「ネオン島」
当然のことながら裏社会も隆盛を極める。
イタリアンマフィア、中国人、ロシア人、そしてラテンアメリカ、アフリカからもアンダーグラウンドな勢力が結集するコアな街。

冒頭のシーンとラストのシーンがつながっているのが印象的。
それは東京湾で水揚げされる魚が、どれも大きく栄養満点。
それは、ネオン島で殺された人間たちが「栄養」として海に棄てられているから。
このあたりのキャッチーなストーリー導入部分は、興味深い。

主人公は吉良潔(28歳)、小玉童示(29歳)の日本人殺し屋コンビ。
最初のTD温泉ホテル地下特別室での、バトルシーンの迫力に驚かされる。
小玉の紹介カットの後、ページをめくると、あまりにもスリリングで、スピード感あふれる見開きのシーン。
小玉は無表情ながら、まるで平松伸二「外道坊」のような静かな迫力で、全員を殺してしまう。
バイオレンスに理論、セオリーなど不必要だが、ここまで一気呵成の処刑シーンは、爽快。
そして、大柄な体格に似合わず、手先が器用な小玉は、相棒・吉良とは「アンビバレント」な存在、そして最高のベストタッグ、ベストパートナー。

その次のカットで、一転して吉良のキザなシーンが描かれる。
ホテルロビーですれ違った女性に「新しいピアス・・・口紅の色と似合っている」と言う吉良。
このあたりのコンビの対照は面白い。

そして、登場するのが今後のストーリーのキーとなる人物、ランオーバー。
イタリアのナポリを拠点とする組織の幹部、31歳。
暗殺されかけたことがあり、それ以来、車椅子での生活を余儀なくされている。

TD温泉ホテルのオーナーと思われる都々目健介(52歳)から、ランオーバーを狙っているタイ人コンビの暗殺を依頼された吉良と小玉。
チンコロという言葉、密告者という意味だが、久しぶりに聞いた言葉。

このタイ人二人、強烈なスメル(香り)、そして同性愛者のコンビでシャム拳法の達人。

このタイ人コンビと吉良、小玉のバトルシーンには驚かされた。
それは派手なバトルではなく、読む側の意表をつくトリッキーなシーンだからだ。
上半身裸の吉良は素手で二人に向かう。
相手は鎌や槍の様なものを持って臨戦態勢。
素手対シャム拳法・・・という図式の展開が頭に浮かんだ瞬間、それは、いい意味で裏切られることになる。

吉良がレクサスで、タイ人コンビ二人を、吹き飛ばしてしまったのである。
体が資本、体が武器の小玉に対して、ニヒルで残虐な吉良の突拍子もないやり方は、好対照で面白い。

その後、タイ人コンビの強烈な香水の香りに激怒した小玉が、ピストルで二人を射殺するあたりは、バイオレンス漫画ならではの不条理な迫力に満ちている。

殺され、ビニール袋に入れられたタイ人コンビは、まるで日野日出志の漫画のような形になってしまう。
そして、東京湾に「餌」として棄てられ、姿を消す。

月一連載(=月刊連載)というのが物足りない気もするが、近未来バイオレンスとしての完成度は高い。
バトルシーンが、単に拳と拳のぶつかり合いだけではなく、吉良と小玉のコンビネーションが巻き起こすトリッキーな面がメインなので、画面に引き込まれること必至。

吉良と小玉のコンビは、「あぶない刑事」のような印象も感じた。
タカとユージ、あの大ヒットドラマの名調子が記憶に甦る。

次回以降も期待。
  1. 2008/02/13(水) 17:53:11|
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